2/2ページ目 「……あ」 顔を上げると、上目使いでぼくの顔を睨んでいる昴さんとバッチリ目が合った。 そう言われてみれば確かにそうだ ここでぼくが感謝のキスをしなければいけないのはペンダントではなく、この素敵な贈り物をくれた恋人にだろう。 「ご、ごめんなさい。そうでした」 「まったくもう」 静かに目を閉じた恋人にキスをしようと、握っていたペンダントを離したら綺麗な星の輝きが消えてしまった。 正確には細工が施されていないつるつるな裏面にひっくり返ってしまっただけだけど 元に戻そうと、もう一度ペンダントに手を伸ばすと、つるつるだと思っていた裏面に何か…小さな文字が刻まれていることに気がついた。 「えっと…Yours?」 「えっ!」 「これ裏面に何か小さな文字が…Yours for…」 「ちょっと待て!大河!君はどこを見ているんだ!」 「Yours forev…er?」 「……あ…」 「Yours forever」 「………」 今度は真っ赤な顔をしている昴さんと目が合った。 でも先程とは違い、すぐに目を逸らされてしまう 「あの…これって」 「ちっ!違う!僕がこのペンダントをプレゼントに選んだのは、あくまでデザインが気に入ったからであって…」 「………」 「別に裏面のメッセージに深い意味はなく…っ」 「昴さん」 普段の冷静さはどこへやら 真っ赤な顔で、あたふたしている昴さんが可愛いくて愛しくてぼくは堪らず恋人の小さな体を自分の胸の中に強く…強く抱きしめた。 『Yours forever』 日本語に直訳すると 『永遠にあなたのもの』 あの慌てっぷりを見る限り、このペンダントをぼくに…と、選んでくれたのはデザインが気に入ったというのも、もちろんあったんだろうけれど、なにより購入の決定打になったのは裏面に刻み込まれている意味有げなメッセージの割合が大きいような気がする。 「…すまない」 「はい?」 「こんなメッセージが刻み込まれたペンダントを身に付けるのは、束縛の首輪のようで君は嫌だろうが」 「いいえ昴さん。ぼくはあなたの…」 普段よりも赤いような気がする昴さんの耳元で自分の気持ちを告げた後、その可愛らしい唇に口付けた。 プレゼントの感謝の気持ち そして愛しい想いを込めて 「ぼくは永遠にあなたのものです」 「…うん。ありがとう」 小さな体を抱きしめ、そしてもう一度口付ける。 今度はちょっと大胆に、普段は苦手な大人のキスをちょっと頑張ってみた。 「キスが上手くなったね」 「そ、そうですか?」 「うん。最初の頃は唇に突進してくる感じだったもの。いつかお互いの前歯がぶつかり合って欠けてしまうんじゃないかって、内心ちょっとヒヤヒヤしてたんだ」 「う……」 昴さんとお付き合いを始めたばかりの頃は、キスひとつするのも緊張しまくりで、ぼくはだいぶ挙動不審な動きをしていたと思う。 昴さんはいつだって笑っていたけれど、内心はとてもヒヤヒヤだったんだ 「ご、ごめんなさい」 「ふふ、まあスリルがあってなかなか面白かったよ?だから…」 ……もっと愛して 昴さんは次に続く言葉を言わなかったけれど、潤んだ瞳はそう言っていたような気がした。 毛足の長い柔らかな絨毯の上に細い体を押し倒し、今度は直接白い肌に口付けると、その体が小さく震えた。 「んっ」 「あ、ごめんなさい。痛かったですか?」 「いや、痛くないから。そんなに慎重にならなくてもいいよ。それに僕は痛くされてもいい…君になら」 「…昴さん」 抱きしめた体は少し熱を帯び吐息は甘い。 乱暴にならないように気をつけながら抱きしめる腕に力を込めると、同じように抱きしめ返してくれる 星と同じ名前を持つぼくの愛しい人 体を動かす度、胸元でキラキラと光り輝く星のペンダントはとても綺麗。 でもぼくは… 今、腕の中にいる輝きを放たない小さな星の方がもっと綺麗だと思った。 END □短編部屋へ <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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